<女将発> 「女将さん!! 今までで一番感動した仕事は何ですか?」

ひがしは、お花見のぼんぼりも取り外され、いつもの町並みに戻りました。

そんなある日、懐華楼に一人の素敵なマダムがお見えになりました。
マダムは、ご主人の出張に合わせて金沢へいらっしゃったそうで、ご主人のお仕事中にお一人で懐華楼へお見えになりました。

お抹茶をお持ちすると、

マダム  「いいお仕事ですね? こんな素敵な空間でお仕事が出来て羨ましいです」

女将   「あんやとっ」
      と、ニコリ。

マダム  「ご苦労もおありでしょうけれど・・・」
  
       私は、この言葉にとても弱いのです。 言われた瞬間、この世界に入った頃の事が
       頭を駆け巡るのです。 
右も左も分からず、ただひたすらに走っていた頃を思いだすのです。しかし、

女将   「なーん。 楽しくさせて頂いとります」

マダム  「お見かけすると、この世界に入る為にお生まれになったようなお方ですね」

ちょっぴり嬉しい。

女将   「なーん。ほんな事ないがやけど・・・」
       
マダム  「ご無礼かと・・一つお伺いして宜しいでしょうか?」

女将   「どーぞ」

      そして、そのマダムは次の質問を・・・

マダム  「女将さん、今までで一番感動した仕事は何ですか?」

       えっ?  うーん・・・。 今までで一番感動した仕事・・・? 
       やっぱり、あれかなぁ?

女将   「昔、この世界に入る前に、航空関係の仕事しとったがやけど、そん時にご縁頂いて
       航空自衛隊小松基地の航空祭で、仕事させて頂いたことやねぇ」

マダム  「へー。お祭りですか・・・?司会か何か? 詳しくお話して頂けないでしょうか?」

      とても興味がおありのようでした。

小松基地では、毎年秋に航空祭があって、ある年から民間の飛行機の説明も取り入れよう
と云う事になったそうです。

某航空会社に勤めていた私に、所長よりのミッションが・・・。
<次の航空祭で基地内の飛行指揮所 (一般の方は入れない)から、我社の航空機を説明して
欲しい。
君の豊かな感性と得意のアドリブで大いに盛り上げてきて欲しい>

得意のアドリブって? 大いに盛り上げて来てって? 困った。弱った。

当日の早朝、航空自衛隊の制服に身を包んだ担当者がお迎えに来て下さいました。
糊の利いた制服に身を包み、洗練された身のこなしが彼の容姿とマッチしていました。

こちらまで背筋が伸び、エスコートされるままに基地内へ・・・。
ゲートを入ると、まさしく<TOP GUN>の世界でした。 
一角には、ロープが張られ入場待ちのお客様が大勢いらっしゃいました。
その前を、その担当者と私が歩く・・・。

その時です!!  一斉にざわめきが起こり、その後、沢山のシャッターを切る音が・・・。
パシャ、パシャ。 カシャ、カシャ。 パシャ、パシャ。 カシャ、カシャ。
ん? 何? 音の方を見ると、大変な事に気付きました。
航空祭にお見えになった航空ファンが自慢のカメラを私に向けているのです。

皆さん、ご存知でしょうか?
彼ら(航空マニアとも云う)のカメラは、本当にすごいのです。
大きなレンズに、三脚・・・。
<私なんか普通の会社員、あなたたち飛行機撮りにきたんじゃないの?> 
それより、怖いって!!

恐怖のさらし者を体験しながら、辿りついた所は<飛行指揮所>でした。
そこには、これまた糊の利いた制服に身を包んだ幹部と云われる方々が沢山いらっしゃいました。
その中には、私が日ごろよりお世話になっているパイロッツトS氏の姿もありました。

彼は、日焼けした肌に整えられた口ひげ・・・。<TOP GUN>を地で行くようなナイスなOJISAMA.
なのです。彼の姿を見つけ少しホッとしました。

S氏  「今日、宜しくね! がんばっつてね!」

限りなく雲に近いその<飛行指揮所>はガラス張りで、その最前列に私の席は用意されていました。
<こんな所に上がることはもう一生無いなぁ。>そう想いました。
いよいよ、航空祭のスタートです。
担当者に 「開始の様子はすごいですよ」 と云われ、私は、椅子から立ち上がり、下の様子を覗き込みました。
ゲートに張られたロープが、外された瞬間にあの大勢の航空ファン達が猛ダッシュをするのです。
大きなカメラバック、三脚を抱えてです。凄い光景に唖然・・・。
と云うか一体どこからこんなに人が集まるの?  皆、何処から来たの? 家やね?
この航空祭と云うイベントですが、ファン(マニア)の中では、この為に、貯金をし立派なカメラを手に入れ情報交換をし、旅費を使い全国各地を飛び回るそうです。

私の出番です。限りなく雲に近いその場所より一言。
滑走路全域に届くマイクに向かって
    
「皆様、片山津方向上空をご覧下さい!!」

一勢にお客様の顔が、片山津方向上空に」向けられる。すごい!!
自分の一言で、これだけ多くのお客様が動くなんて・・・。

「只今、片山津上空より見えて参りましたのは、東京からの○○○(民間航空会社名)751便です。
ボーイング○○○型機、全長○○○メートルのこの便は、普通席500席、スーパーシート20席の528席をご用意いたしております。
小松ー東京路線は、全国でも有数のビジネス路線となっております。
二階席のスーパーシートをご利用のお客様には、ゆったりとしたシートでおくつろぎ頂き、お預かりのお手荷物の優先引渡しなどのサービスもございます。

どうぞ、皆様、我社自慢のスーパーシートで快適な空の旅をお楽しみ下さいませ。
それでは、○○○751便只今到着です!!」

と、飛行機のタイヤが滑走路に着く瞬間にピタリとおさめます。
これが、難しい。このような機体説明と紹介等を到着便、出発便にあわせて行います。

札幌便の紹介の時には、「この冬、皆様も白銀の世界で白い恋人たちを演じてみませんか?」
などと云った今想うと、とんでもない台詞を事も無げに言っていました。(笑)
自分の一声で多くのお客様が同じ方向を見、そして歓声をあげる。そして、拍手・・・。

私が居る高さに向かい、親指を立てて<GOOD!!>のポーズをしてくださるお客様達。

その姿に胸が熱くなり、鳥肌が立ちました。
本当に貴重な仕事をさせて頂いた事に改めて気付き、感謝の気持ちでいっぱいになりました。<最初で最後のこの仕事>そんな想いでおりました。
が、次の年もそしてその次の年も、所長からのミッションは私に下ったのです。
一秋の経験が、三年も・・・。

後日の公式発表では、初年度の航空祭の入場者は、約63000人でした。
その数字を聞き、またまた鳥肌がたちました。
参考までに、平成17年の入場者は、約112000人との事です。
本当に航空祭ってすごいのです。

私の、一番感動した仕事。こんな話をしながら、素敵なマダムと過ごした春うらら・・・。

皆さんの、今までで一番感動した仕事は何ですか?

                                              あんやとっ


追記、あの<GLAY>と云うとても有名なグループの野外コンサートの入場者数は、約50000人
    だそうです。それよりも多い人数なんだ・・・。うーん、すごい!!
    もう二度と、あんなに多くの皆様の前に立つ事は無いでしょう。若いから出来た仕事です。
    あの頃、私は若かった。  ピチピチギャルとも云う・・・。(笑)

    そう云えば、素敵なOJISAMAのS氏。現在も空を飛び、雲の上から私を応援して

    下さっています。しかし、あと数日で退官をなさるとの事。
    本当にお疲れ様でした。寂しさでいっぱいです。



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by kaikarou | 2006-04-23 23:10 | 女将発
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